神田香織話し方教室」「講談教室」
株式会社ヘルスウェイ 2002年5月
名古屋 うりんこ劇場 2006年1月
 今「声に出して読む日本語」という本が売れています。日本の名文の暗誦、朗読を通して「日本語の宝石」を身体の奥深くに埋め込み、生涯にわたって折りにふれその輝きを味わうというものです。私、神田香織はまさにそれを職業とする講談師になり20年になります。
 「言葉は言霊」と言いますが、自ずと歴史や人物に興味が沸くようになりました。何より話すのが楽しくなりました。
 「語り」で人を説得させる技術はすぐに身に付くものではありません。大切なのは基本です。私の経験を通じて、御社の店長のみなさまに講談700年の「話芸のエキス」をぜひ収得していただき、営業に役立ててもらえましたら幸甚です。
1.「話し方 しゃべりの基本の基本」
 「大きな声を出そう」 声を出す技術 呼吸と発生
 うつくしくなくともあなたの声で
 一人で出来る訓練法

2.「すてきな大人〜自己紹介を楽しく」
  講談調で自己紹介 リズムとテンポの大切さ
  言葉と体 よい言葉を体で覚える(1)
  リズムの補助具 張り扇をつくってみよう
  
3.「人生に感動を」
 暗唱と音読の技術  よい言葉を覚える(2)
 あなたの座右の銘は? 声に出してみよう 人に聞かせてみよう
 楽しんでしゃべる 自然と口に出る言葉を持っていますか?
 
4.「はなし上手は商売上手」
 セールストークの古典 「ういろう売り」
 聞いている人を楽しくさせる 話芸 古典に学ぶ
 
5.「話題の素 ネタをひろう」
 豊富な話題は豊かな人間性の糧
 古典から学ぶ 
 身近なものから学ぶ
 映画、ニュース、本からひろう 1分間でしゃべってみよう
 「序・破・急」(起承転結) 緊張と緩和ということ
 
6.「ちょっとだけあなたも気分は講談師」
 好奇心(チャレンジ)を持つこと よく知ること 人にはなすこと
 個性 ひとりひとり魅力のある人間になろう 流行(はやり)の言葉は使わない。
 
毎回、参加者に宿題があります。テキストあり
 皆さん、こんにちは講談師の神田香織です。私がこの世界に入ったのは、発声練習のお稽古がきっかけでした。舞台俳優を目指していたのですが、声が小さく、恥ずかしがり屋さんだったのです。一年間習った後、思い切って講談の世界に飛び込みました。講談は一人で語るのですから度胸がつきます。声も大きくなり表現力が豊かになりました。日本語のリズムっていいものです。ぜひ、あなたも挑戦してください。
 先ず講談とは、講談の講は歴史という意味です。つまり過去の歴史を面白わかり易く講ずる、話をするのが講談(むかしは講釈といっていた)、話をする人が講談師。慶長のころ、赤松法印(お坊さんだと思います)という人が徳川  家康の前で『源平盛衰記』などを読んだのが講釈のはじまりといわれておりますから、五百年以上の歴史があるんです。江戸時代になると殿様や偉い人ばかりではなく、八つぁん熊さんのような庶民を相手に講釈するようになりました。往来の辻に立って話をしたので辻講釈、あるいは町講釈といわれました。長いこと話をしていると客人が疲れるからと長イスを容易し、風除けのついたて、雨が降ってもと屋根が出来、伊東燕晋(いとうえんしん)という講釈師は「私共は恐れおおくも東照神君家康公の講釈を致しますので、聴衆と同席では申し訳なし」と、縦横高き各三尺の高座の上から話をする許可を得て、寄席高座のスタイルになった。
株式会社ヘルスウェイ

 2002年の5月から10月まで、健康食品を手がけるさんが、自社の若き営業マンを対象とした「神田香織の話し方教室」を開催してくれました。
 講談の発声、話法を中心にテーマもテキストも自分で構成するのですから責任は重大、私自身相当勉強になったのは言うまでもありません。月一回で計6回、会場は浅草橋のとある会議室。毎回テーマを決めて約2時間、何が飛び出すか分からない、楽しくスリリングな(?)ひととき。生徒さん達は男性約40人、若くてハンサムな粒ぞろいです。もう、それだけで舞い上がってしまいそうなのに、皆さん目を輝かして真剣に聞いてくれるのです。
 終了後はいつも弟子のおりねと浅草橋の飲み屋さんで高揚した気分をまず生ビールで冷ますのが習慣になっていました。えっ、どんな内容だったか、それでは最終回のテキストに要約してありますのでご紹介しましょう。
あなたの会社でも如何ですか・・・


一回目「話し方、しゃべり方の基本の基本」
 まず、呼吸、発声の基本、活舌練習を体感していただきました。また、メンタルな面では自分に自信を持つこと、自分を好きになることが基本の基本ということを自覚していただきました。「自分は世界一のいい男!」を忘れないでくださいね。あなたは世界中でたった一人しかいない「代えのきかない」人間です。自分で自分を大切にすると他人のことにもやさしく寛大になれるのです。

二回目「すてきな大人になるために」
 日本語のリズムとテンポを身体に刻み込み、魅力的な話し手になるのが素敵な大人への第一歩です。内容のある話をしても「えっ、なんて言ったの」などと聞き返されたのでは白けてしまいます。大きくはっきりした声を身につける近道は「活舌」と「発声」の練習を繰り返すことです。講談独特のはっきりした声やオーバーな表現法はセールスポイントの基本です。この回から張り扇を用いて「講談」に挑戦していただきました。

三回目「人生に感動を」
「感動」を忘れた日常は灰色です。「喜怒哀楽」の感情を意識すると灰色の日常が色彩豊かなものに変わり、話が生き生きとしてきます。疲労や心労が重なると無感動になってしまうのでそんなときはちょっと立ち止まり、自分をみつめ直してみましょう。歌手は歌を歌うことで自分を知る。噺家は人前で噺をすることで自分を知る。販売員はものを売ることで自分を知るのです。自分がやろうとしていることをとにかく楽しむことが大切なのです。「経験したことを、どう自分にとって望ましい形で意味づけるか」という発想は大切です。この考え方が身に付けば「失敗など恐れるに足らず」です。積極的にかつ感動的に「人生」や「仕事」に向き合っていきましょう。この回では話すときの「心構え」について、いくつかのキーポイントを紹介しました。

四回目「はなし上手は商売上手」
営業は「聞き上手」でかつ「押しの強さ」が大切です。売り物(健康食品)に惚れることがまず肝心で「思いこみのエネルギー」の強さがお客さんを財布のひもをゆるくするわけです。そのためにも必要なのが人を引き込む会話ですね。「話三分に聞き七分」、お客様との関係を良くするためには、まず、相手を受け入れているということを知らせましょう。お客様も自分の話を聞いてもらいたいものなのですかから。毎回テキストを見ながら発声練習している成果が出て、この回頃からみなさんかなり声が出るようになりました。

五回目「話題の元 ネタを拾おう」
 教養、素養が話に花をそえます。話題の引き出しの多さが話し手の魅力につながります。さて、私たちは日本人としてどれぐらいに日本文化に親しんでいるでしょうか?外人の方から「歌舞伎」「邦楽」について聞かれても何も説明できないようでは日本人として恥ずかしいですね。そこで日本文化の入り口として身近な邦楽、「都々逸」になじんでいただきました。皆さんの創作都々逸はかなりのレベルで、一回で終わるのがもったいないぐらいでした。ぜひ、都々逸を趣味に特技につなげて、話の中に取り入れてください。
五回までを振り返ってみましたが、話し方上手になるには「好奇心」「チャレンジ精神」を持つことがいかに大切かと言うことが分かりますね。そのためにもいろんなことに興味を持って「よく知る」努力を忘れず、失敗を恐れず「人と話すこと」を意識してしてみてください。

さて、最終回の今回はいままでの教室で学んだ発声法や表現法を実際の講談を例に取り、完全に掌握する総集編です。テーマもずばり「ちょっとだけあなたも気分は講談師」。
 さあ、きょうも、楽しく、新たな自分を発見して、明日からの仕事に役立てましょう!!

 という具合です。なんとなくイメージつかんでいただけたでしょうか?特筆したいのは5回目の「都々逸」です。聞き慣れない節回しに挑戦して、生徒さん自らがその場で作った都々逸を披露してくれたのです。いくつかご紹介します。「仕事終わった その後からが 俺の楽しみ さあいこう」「勤めもなれて 手抜きを覚え 初めの頃に戻れない」実感がこもっていますね。「いついつまでも どんなときでも 前に進もう ヘルスウェイ」「民の健康 我らが守る 理念と使命 ヘルスウェイ」“社歌”ならぬ“社都々逸”にしたいぐらいです。こんなのもありました。「月に一回 あなたに会える 僕のあこがれ おりねさん」「おりねがいいと 今日は言い 明日は香織が いいという」。

 最終回は数人の方に前に出て張り扇を叩きながら短い講談を実演してもらいました。実に堂々として
 なかなかの講談師ぶりでした。その後、おりねと私が一席ずつ講談を披露。最後に修了証書を手にした皆さんひとりひとりと記念撮影。各営業所に修了証書とともに写真も飾ってくれるそうです。ぜひ話し方教室の体験を生かし、会社の業績アップに役立てていただきたいと願うばかりです。拍手で見送られた感動の修了式から2週間たちました。頂いたお花はまだ事務所に華やかな彩りを添えてくれてます。また、社長さんからプレゼントの健康補助食品「コラーゲンマトリックゴールド」とスキンケアオイル「ホホバクイーン」の成果が出てきたのでしょうか、前にもまして肌がつるつるの私とおりねです。ヘルスウェイさん、生徒の皆さん、ほんとにありがとうございました。御社のご発展をこころよりお祈りしております。また時々呼んでくださいね。

2006年1月 名古屋 うりんこ劇場で役者さん対象に講談教室

三日間本当にありがとうございました、劇団うりんこの内田です。
今回不相応にもかかわらず神田先生と受講者の仲介役をやりましたが、私の準備、段取りの悪さをすべてプラスの方へ転換していただいて、素晴らしい授業をつくり出してくださり本当にありがとうございました。
口伝えで伝承されてきた日本の話芸は西洋音楽の五線譜伝承に比べると前近代的な感じがしていましたが、「体に入る」という意味で演じ手は芸を肉体化しやすいのだなと感じました。もちろんたった三日かじったぐらいで何がわかる、といわれそうですが不器用な私の肉体は五線譜から歌を唄うよりもはるかに心躍って嬉しい気持ちがしました。自分の中の冷めた自分をもう少し、香織先生のように、飼い慣らせたらと考えています。「チェルノブイリの祈り」の公演楽しみにしています。
劇団うりんこ  内田成信
 

 やあやあ 我こそは、劇団うりんこにこの人ありといわれる、大谷勇次なり〜。
三日間のワークショップ、誠にありがとうございました。
いわゆるレッスンとしては、久しぶりに充実した時間を持て、感謝しております。
正直申し上げれば、講談のさわり?を体験したく、参加致しましたが、とんでもありませんでした。
香織さんの真摯で熱意ある指導に、安易だった動機は吹き飛び、実に有意義で、
真剣な時間が共有できましたこと、誠に感謝しております。
昨年の「はだしのゲン」で、初めて出会い、また濃密な時間を過ごす事ができ、
楽しかったです。次は「チェルノブイリ」で、お会いできるのを楽しみにしています。
短い時間での講義で、講談が習得出来るわけはなく、本業の芝居には直接的には、
結びつかないと思いますが、いろいろな要素や根源?を、発見させていただきました。
表現の方法?手段?は違いますが、根は一にしている実感を得、力強く感じました。
これからも、平和で人間らしく豊かに生きられる社会を願い、公演・講演していきましょう。
まだまだ寒い日が続くと思います。くれぐれもお身体をご自愛下さい。

講談教室レポート
 源左エ門駆けつけの一席、単語の意味も理解できていないまま、とにかく理屈抜きに声に出してみる。踏ん張る、吐き出す、思い切り高く張る・・・独特の言い回しで声を出す。繰り返して声に出していたら、胸に何かぐぐっと込み上げる物が湧いてきた、話に感情移入したわけでもないのに。
もしかしてこれ、日本人の血が騒いでいる・・?
 そして出したことがない声、むきだしの肉声の先に、あかむけの自分が姿を現す。声には自信がなくずっとコンプレックスを持ち続けている私。こいつとの対面はちょいとへこむ。私のあだ名はヒナだけど、時々本当にヒナドリのまま成長できないのではないかと弱気になる。ところが、それでも続けて声を出していると声が当たっている肉体のその場所から、まだいける、もっとこいもっとこい、と返事が来るのだ。講談の持つ独特の発声法が勇気とエネルギーを湧き起こしてくれているようだ。
 今俳優として自分が手に入れたいものは、心に響く声、そして自分の言葉。講談から学ぶ事はとても多いということに十分うなずけた3日間。手強いけれど、ど〜んとぶつかったら、それだけの物が返ってくるこの講談、稽古に是非取り入れようと思っている。
 神田香織さん、豊かな時間をありがとうございました。この続き、ぜひやりたいです。
2006.1.11劇団うりんこ 朝比奈 みどり