講談とトーク「チェルノブイリの祈り」/「未来への希望」 2003.5.18

第二部 テープ起こし原稿

【相沢】 ただ今から第二部を始めたいと思います。第二部の構成は、最初に村田光平先生からお話をいただきまして、その後に神田香織さんを交えましてトークをするということにしたいと思います。私、トークの司会をします相沢と申します。

 村田先生のお話を聞く前に、簡単に先生の略歴をお話申し上げたいと思いますが、詳しくはプログラムに載っておりますけど、1938年東京にお生まれになって、東京大学を卒業後、外交官生活に入られまして、セネガルの大使そしてスイスの大使をお勤めになり、現在は東海学園大学の教授として、教鞭をとられています。セネガルの大使の時に大統領に太陽光発電の意義を訴えて、その設備を提案するということをなされたり、スイス大使の時代には日本国政府に対して防災訓練をするようにというような提言をするなど、外交官の方としてはきわめてユニークな活動、環境問題に関心を持った立場からの活動をなさっておられる方であります。それではまず村田先生のお話を聞きたいと思います。ご紹介いたします。

村田 ただ今紹介に与りました村田でございます。先ほどのすばらしい神田香織さんの講談をうかがいまして、まだ感動覚めやらぬ情況でございます。

 わたくしはただ今ご紹介がありましたように、若干変わり者と見られております。私は「未来の世代の代表」を名乗っておりますし、それから今目標とするところは原子力政策を国策とする、この国策の旗を降ろすと、降ろさなければいけないと、国民の安全を脅かすものは国策であっても改めさせなければならないと。そういうことで今二つの理想を掲げております。

 一つは民事・軍事を区別しない、地球の非核化。そしてもう一つは、これと車の両輪のように行わなければならない新しい文明の創設と、これを日本が世界に向けて訴えなければならないと、そういうことを言っておりますが、今日の神田さんのお話をうかがいましてわたくしはますますこの決意を固く、あらためて固くしたところであります。

 今日はテーマが未来への希望ということでございますので、まずそこから入っていきたいと存じます。

30分弱お話させていただくとのことでございますので、駆け足のようにして触れていきたいと思います。

 わたくしは先ほど申しましたように、大きな理想を掲げております。なんでそんな大それた理想を掲げるのかと、わたくしにはひとつ、そのわけがあるのです。

 わたくしは、天の摂理というものを信じております。そして歴史を振り返りますと、やはり盛者必衰の理ということを、日本人はみんな平家物語から学んでおりまして、それを納得しております。そして世界の歴史を見ておりますと、暴君は必ず立ち去ります。独裁者は必ず最後は立ち去ります。ヒットラーしかり。最近の例でもいくつもございます。そういうことで、必ず良き思い、天が助けると、そういうことがわたくしの考え方の基礎にあるわけであります。

そういうことで、もしこのまま国策、原子力政策が進んだ場合に、わたくしはひとつ確信があります。それはちょうど戦前、軍部が独走して破局に至ったように、こんどは、原発大事故という破局が待っている。そのためにわたくしは今、全力投球しておりますが、その原子力の危険性を悟らせないようにするために、タブーというものが存在しております。そのタブーとは何かといえば、その原子力の危険性あるいはこれに反対する立場、それを口にすると大変な、社会的な不利益が被るような仕掛けが存在するわけであります。わたくしは、それを自ら立証できるわけであります。

その会社内、あるいは組織内では、いわゆる立身出世に必ず影響が出るような仕組みがあります。それからいろいろな職業から妨害を受ける。ホテルならホテルの妨害、そういうものの実例を沢山知っております。そしてこのタブーを破らない限り、わたくしは大きな破局が待っていると、そのように確信しているわけであります。

 最近、面白い記事が、たいへん興味を引く記事が、つい数日前ある新聞に出ました。それはいま新型肺炎の問題で、中国で最近シンポジウムが開催されたわけです、北京で。そこで、中国の高官がなんとGDP至上主義はだめであると、そのように発言しているわけであります。わたくしが言っている経済至上主義ではだめであるということが、なんと中国の高官の口から出たわけです。もっと、そのGDP至上主義ではなく国民の福祉を考慮した政策を採らなければいけないという主旨の発言が、中国から、中国の高官から出たということをわたくしは非常に印象づけられました。そういう中で、中国にとってのSARS・新型肺炎、わたくしにとってはこれは原発大事故であるわけであります。

 そしてわたくしと同じように経済至上主義を批判するこの立場は、日本人以外、いまグローバリゼイションを進めている本家本元のアメリカから発言が行なわれ出しました。それは、みなさまご存知の、ハーバード大学のガルブレイス名誉教授が、今年の日経の一月の「経済教室」に大きな記事がございましたけれども、成功の尺度を雇用の水準、所得の水準、財とかサービスの量、こういったもので判断するのは間違いである。忙しければ忙しいほど、その評価されると、このような価値観は、間違ってると。新しい価値観を日本が世界に向けて発信して欲しいと。そういうことをガルブレイス教授が伝えているわけでありまして、このようにアメリカ、中国というようにですね、そろそろ新しい文明の必要性を唱える声がだんだんと出てくるのではないか。

 日本国内でも、先ほど申しましたようにタブーが存在するために、なかなか指導層からは出てこないわけではありますが、しかしだんだんとですね、綻びてきているのではないかと。わたくしはそのように感じております。今日わたくしがこのように東海村に招かれて、大変貴重な体験を得ることができたということも、そのタブーの綻びを証明しているのではないかと。わたくしはそのように解釈しているわけであります。

それで、なぜわたくしがこの天の摂理を感ずるか、そこで今重要なことは、世の中日本を含めてどんどん悪くなっているではないか。バブルは崩壊し、社会的崩壊もある、教育の崩壊もある、犯罪は増えていると。このように世の中だんだん悪くなっていて、これは否定できない事実だと思います。

 わたくしはこの状況を捉えまして、特に原子力問題で見られる、この異常性、これをわたくしは日本病というふうに主張しているわけでありまして、その日本病とは何かという、その説明におきまして、「三カン欠如」ということを指摘しているわけです。三カンとは何かといえば、まず正義感であり、それから責任感であり、倫理観。この三カンが欠如しているとこれが日本病であると。その典型的な例として、わたくしはよくあげるんですが、浜岡原発の例であります。1969年に地震予知連という公的機関がマグニチュード8クラスを超える大地震の発生を予測しているわけであります。その翌年から四基の浜岡原発の申請許可が認められるわけです。そして五基目が現在建設中であります。そしてここに、この浜岡原発が存在するのは、まさに東海大地震の発生が予想されている地域のど真ん中でございます。そしてわたくしは昨年の五月、この浜岡原発の運転停止を求める声明を6名の連名で発表しました。そのなかに、元国土庁の事務次官の下河辺淳さんが参加してくださいました。この方は、原発の立地条件についての責任者だったわけです。そして彼は、今の日本の原発は地震との関係で合格するものは一つもないと。そして日本は、ご存知のように世界の地震の10%が日本で発生しているわけであります。このようにマグニチュード8クラスの地震が予想される所のど真ん中に4基の原発が存在し、なおかつ5基目が建設中。わたくしは、これはどうしても説明できません。予知連の会長を10年間務められた茂木清夫東大名誉教授が、何度も新聞で伝えております。これは異常事態である、とうてい納得できない。

 わたくしはこの具体的事実は、もう日本病ということ以外に説明できないということで、日本病という言葉を、わたしは2年前に出版いたしました「新しい文明の提唱−未来の世代へ捧げる」という本の中でそれを伝えたわけであります。そして先ほど「三カン欠如」があるといいましたけれども、これはある意味では日本病のみならず、世界病でもあると。

今、世界に430の原発が存在し、36カ国にこれらの原発が存在するわけでありますが、必ずわたくしは事故が、大事故が起きると。今までわたくしは1997年の新年のあいさつで、これは、私的私信でありますが、先ほど紹介していただきましたように、原発震災の事故演習をやるべきであると日本の指導層に新年のあいさつという形で送りました。これは、ある意味ではタブー破りであります。わたくしは、そのタブーを破るのに、他の会員の迷惑をかけてはならないと思いまして、年末年始の休み中に文書を作って、各仕事が始まるまでに全部発送を終えて、迷惑のかからないように配慮したのを思い出しているのでございます。

その2ヵ月後、3月に東海村の動燃の再処理工場で爆発事故が起きたわけであります。それから1年半後、さらにJCOの事故が起きると、わたくしは今まで専門家の意見とわたくしの意見と比べまして、私の意見の方が正しかったことがあまりにも多いので、驚いているわけであります。

そういうことでわたくしの本の中で「原子力と日本病」の本の中で指摘していることがありますが、これからの流れとして、わたくしはそこでいくつかの点で指摘しているわけですが、もう専門家の時代は終わって、これからは市民の時代であると。それから、知性の時代よりも感性の、そして技術よりも直感、これらが重要な役割を果たさなければならないということを強調しているわけであります。そして、先ほど申しましたように、国策といわれるものが国民の安全を脅かしている。これを改めさせる、唯一それが可能なのは、わたくしは市民社会が日本でもっと発展して、そして政府を引っ張っていくと、これなしには国策の政策転換ははかれないと。そしてすでに市民社会というものがすでに実績を上げております。対人地雷の面でも、日本の市民社会の役割があって、渋る政府を引っ張っていったと。それから京都の環境会議におきましても、NGO、NPOの市民社会の大変な働きがあって、あそこまでもっていけたということで、すでに実績は示されているわけであります。

そういうことでわたくしは、この先ほど申しました、二つの理想、地球の非核化それから新しい文明の創設につきましても市民社会、ちなみに市民社会といいますと、今日おいでの皆様市民社会の一員なんでございます。わたくしは社会の構成員は全て市民社会の一員であると。例えば最も原発を熱心に推進している方々も市民社会の一員であります。そういう意味では、全員共通の目標を持っているわけであります。それは、今日うかがった「チェルノブイリの祈り」のような、あのような悲劇を起したくないと。そういう点では、全員共通の目標を持っているわけであります。わたくしはそういう自信があるからこそ、この嫌われ役をかってですね、執拗に今の活動を続けているわけであります。 

大変不利益をこうむります。それから評判も落とします。それから友達も去っていきます。そういうことが多いんです。しかしわたくしは最終的には、必ずこの国民は最終的には必ず理解してくれると、その確信があればこそ、このような活動が続けておれるわけであります。

そして新しい文明の内容につきましては、この異論のないところが、もうすでに答えは出ているのではないかと思います。ひとつはまず今のGDP経済学、今の、今日の経済学はGDP経済学といえると思いますが、計量化、貨幣化されるもの以外は全て無視しております。しかし、人間の幸福に必要なものは、ほとんど目に見えないもの、計量化できないもの、貨幣化できないものであります。家庭、地域共同体、治安、きれいな水、きれいな自然、こういったものは全て貨幣化できないものです。逆に爆発事故が起きれば、経済成長は数字的には伸びる。犯罪が増えれば数字は増えると。経済成長は数字的には伸びる。要するに経済成長の特質というのを全然考慮していないのがGDP経済学であります。そして東大の非常に有名な先生、岩井克人先生がいみじくも指摘しております。現代の経済学は完璧である、一つの点を除いて。それは未来の世代の利益を完全に無視している。そして経済学というものは、出発点においてそもそも倫理に反している。アダム・スミス国富論におきまして、自分の利益を追いなさい、みんなが自分の利益を追えば、見えない手、インビジブルハンドが、見事な市場の調和を生み出してくれる。そして倫理の根本というものは、自分の利益を追うのでなく、相手の立場を慮ること、思いやること、これが倫理の根本ですが、経済学は、それを当初から否定している。そういうことで、見えない、声のない未来の世代、その利益を反映するためには、最高度の倫理が必要とされる。というのが、岩井克人先生の論でありますが、まさに今の世界の現状を見ますとその通りになっております。やはり今の世代のことしか考えない。そして未来の世代に属する天然資源を濫用して今日の繁栄を築いている。その典型的な例は、石油であります。100年後の中東諸国の人たちは、先祖を恨むと思います。

それから2番目には、永久に有毒なものをどんどん垂れ流していっております。原発廃棄物がその最たるものです。もうこれは、責任感の完全な欠如と思います。

それから財政的負担、どんどんつけを未来の世代にまわしております。日本でも今660兆円、全部未来の世代につけをまわしているわけです。これはもう完全に倫理の根本に反していることをやっているわけであります。わたくしは未来の世代に対して、現世代は大変な責任を負っていると、だからこそわたくしは地球の非核化ということを果たすことが現世代の責務であると考えております。

とりわけ日本、唯一の被爆国です。世界で、日本ほど、先ほど詳細に説明がありました放射能災害を体験した国はないんであります。日本は地球の非核化を世界に伝える責任と義務を持っている、これは当然の発想だと思います。どこかで、どっかでこの狂いが生じている。私はこれを称して「なぞ」と称してるんです。唯一の被爆国が、今最も熱心に、世界で最も熱心に原発・原子力を推進しようとしている。そしてその手段は何かといえば、お金をばらまくことであります。

最近、中国地方の広島の毎日新聞の大きな記事が、昨年秋ですか、出ました。島根県の鹿島町、ここには一昨年7億円の匿名の寄付があったと。また7億円、昨年も匿名の寄付があった。匿名といいながら、どっから出ているかと、みんな知ってるわけです。原発を作るために、反対をなくすため、そういう目的であることは見え見えなわけであります。この破局の種を、お金を払うことによって反対を封じてこの種を植え付けると。これは、わたくしは小泉総理にも手紙を出しまして、もう日本病も末期症状であるということを、指摘したわけであります。

このように今、日本はこのままでは大きな破局が到来してしまうと、わたくしは確信しております。そのためにはやはり国策を変えさせなければならない。やはり、電力会社あるいは県に伝えても、わたくしは限界があると思います。なんとしても国策を変える。ここにわたくしは、今これから全精力を集中していかなければいけないと思っております。そして今日の集いのように、市民社会の方々がどんどん立ち上がる。

ひとつ、天台宗を作った最澄の言葉がわたくしは大変参考になると思います。それは、「一灯照隅万灯照国」、ひとつの灯りは一つの隅しか照らさない、しかしみんながそれぞれ照らせば、国全体が明るくなると。これはまさにこれから必要な市民社会を鼓舞する言葉だとわたくしは思っております。そしてそのためには、これからやっていかなければならないことは、もちろん沢山あるわけですが、その中でわたくしは、重要なのは教育だとおもいます。そして教育は、先ほど申しました「三カン欠如」した人たちがいくらやってもだめだと思います。「三カン欠如」を直さないで制度を変えても、本質的には改まらない。

そしてわたくしは今日のこの世界の混乱を招いている最大の理由は、先ほど申しましたが感性不足からきている。と申しますのは、感性というのは、倫理、道徳の源であります。思いやりの源であります。

それから、先ほどの恐ろしい事態を想像する力が、今日指導層からもう消えておりますが、この想像力、これも感性が源になるわけです。そういう意味では、その感性教育というものが、これからの教育の大変なポイントになるのではないか。そしてこの教育は、なぜ感性が必要かと申せば、やはり、医学的には感性は右脳だそうですが、右脳の中には人類の先祖からのあらゆる知恵が入っていると。左脳は一代限り、右脳は循環して先祖に戻り、先祖から受け継ぐ、祖先に戻すと循環すると。そしてこの右脳の中に教育に必要な、この生きる力というものが入っている。この生きる力を引き出すのが、教育の、学校の目的であるべきであると、これも感性の問題だと。感性教育というのはそういうものであると。

だから今世界で、指導者で、世界全体のことを考える人がいないといわれる所以だと思います。やはり本当の指導者、これはなにも政治指導者だけを言うものではないと思います。各分野、各層に、わたくしはこれをグローバルブレインといっているわけですが、グローバルブレインとは、各層に必要である。NPO、NGOそういった分野でも必要であると。そのグローバルブレインとは何かと言えば、地球の将来、人類の将来を、考えることのできる人、これが、今世界には欠けている。そしてこのままでは、日本は、この特に日本は、日本病ということで破局に立ち向かっている。決して民族的にですね、そういう欠陥をそなえているとは思えない日本国民が、このようになっているのは何かといえば、先ほど申し上げました、GDP経済学、経済至上主義、これが病根となっている。これからは、この物質主義から、より精神的な文明へ、そして果てしのない貪欲からアジア的哲学である、「足るを知る精神」、これに立脚した新しい文明と、そういう方向に努力を持っていかなけりゃいけない。

そしてもうすでに新しい文明のもとになるエネルギーは登場しているわけであります。これは、酸素と水素を化学反応させてエネルギーを作る燃料電池であります。もう燃料電池という究極のエネルギーは登場しているわけです。これを、水素を作るのに太陽エネルギーなり、風力という自然エネルギーを使えば究極のエネルギーであることは、専門家の一致しているところであります。そしてもう開発が始まっております。わたくしはこれが、我々が何もしなくても燃料電池が原発を追放する日は、必ず近い将来くると思います。しかしそれを待っていたんでは、この破局に対する有効な対策とはわたくしはとうてい思えません。そういうことで、今後とも皆様と力を合わせながら日本の国策の旗を降ろさせるということ、努力を続けていきたいと考えている次第であります。

神田香織さんを交えたトーク

【相沢】 どうもありがとうございました。大変短い時間の中に非常に大事なことが非常にわかりやすい形でお話をいただきました。これから神田香織さんに入っていただきまして、今のお話に基づきながら話し合いをしてみたいと思います。

先生は外交官であったわけですけれども、私たちがイメージする外務省だとか外交官というのは、どうも先生のイメージとずい分違っていまして、ご自分でもちょっとひねくれておるんだとおっしゃっておられたようでありますが、のっけからですけど、スイス大使の時代にですね、先ほどもお話になられた、日本国の政府に1997年に防災訓練をすべきじゃないかという風な提案をされたというお話でしたが、その辺のところをもうちょっと詳しくお話いただいて、そしてそれが外務省の中でどんな風に受けとめられというか、どんな風な抵抗があって、それを乗り切って、そういう提案をなされていったのかというようなこと、最初にちょっと。

【村田】 わたくしは、セネガルの大使時代に、太陽エネルギーを導入するために大変頑張ったんです。なぜ太陽エネルギーになったかというのは、第四次中東戦争が起きたとき、わたくしはカイロにおりまして、あのときの油 ? 外交に非常に嘆いたわけです。やはり石油に代わるエネルギーはないものかと思っておりましたら、当時フランスの新聞にですね、アフリカに太陽エネルギー村を作ったという小さな記事がありまして、それ以来わたくしは太陽エネルギーに大変関心を持ったわけであります。そういう中でですね、危険なエネルギー・原子力、これを少しでも想像力をもって、わたくしは先ほど想像力が欠けていると申しましたが、想像力を持っていればですね、原子力の危険性っていうものは小学生でもわかると思うのですが、それが異常に推進されているということに疑問をもっていたわけです。

そういう目でスイスを見ておりますと、スイスには自然エネルギーだけでエネルギー自立を達成するという国民運動がありまして、わたくしはそれに協力したわけですが、そういうスイスがですね、やはり原子力事故演習をやったと。そこでわたくしは、任国の大使の任務は、その国から学べることを本国政府に伝えることだと確信しておりましたので、それを日本の指導層に伝えたという事であります。

【相沢】 なるほど。普通ですとね、本国からの訓令を受けてそのとおりに自分の赴任している国に伝えるということが、普通の形なのかなと思ったわけですけれども、逆に必要なことを国にどんどん提案しかえしていくって言うんですか、そういうことをなされてきたっていうことで、あらためてユニークな外交官活動を行なわれていたっていうことを  ?  しだいですが。

それで本題のほうへ入っていきたいと思うんですけれども、

まず、先生、神田さんにもお聞きしたいと思うのですが、この私たちの方からですね、東海村に来てお話して欲しい、あるいは講談をやって欲しいという風に申し入れを受けたときにですね、東海村ということで、どんな風にお感じになり、お受け取りになったのかっていうことをお聞きしたいと思うんです。まず神田さんのほうからお聞きしたいと思うんですが。

【神田】 その前にちょっとだけお時間をいただきまして、村田先生のお話を聞かせていただいて、大変にわたくし心強く思いました。先生は本当にいろんな不利益をこうむりながらタブーを犯さなければならない、国策を変えるために、というふうに力強く決意して仕事していらっしゃる。で、わたくしも、業界は本当に全然違うんです。若干50人に満たない講談の世界ですけれども、やはりその中で、「はだしのゲン」を17年語ってきた中で、核の恐ろしさってものを肌で感じる中で、どうしてもチェルノブイリのお話をしたいということで、講談界のタブーを破って、一人なんかあの神田香織はちょっと毛色が違うなんて言われながらもやっておるもんですから、いまそれで、先生のお話を聞いてほんとに力強い思いがいたしました。

さて、東海村に、の話ですが、この「チェルノブイリの祈り」という講談は去年できたばっかりで、12月にいわきで最初に初演しました。そのときに今日の全体の企画をしてくださっている黒羽さんをはじめ、4人ぐらいの方が、わざわざいわきへ来てくださいました。で、そのときから是非東海村で語らせてくださいというふうなお話は、しておりました。

? 最初に申しましたように隣の福島県の、しかも浜通りの出身なもんですから、ここは年中東京行くときにもちろん通過しているわけでございます。で今から4年ほど前にわたしはいわきの方に根拠地をおいて仕事をしておりまして、ちょうどこの事故が、JCOの事故がございましたときには、さすがにどうしようと思いまして、こんなこと申してはなんですが、高速バスで移動するときにですね、東海村の近くに来たときに、無駄とは知りながら、こう、息をつめたり、そんなことしていた記憶がございまして。そういう意味でもわたくしの近所にも原発がございますので、非常に親近感ていうんですか、そういう仲間という意識があったもんですから、今日は大変うれしく思ってやってまいりました。

【相沢】 どうもほんとにありがとうございます。村田先生いかがでしょう。

【村田】 わたくしは東海村に来て欲しいという話をうかがいまして、そのときは、あ、とうとう本丸だなと、そのように思いました。そしてやはりわたくしは、先ほどから政策転換と言っておりますが、政策転換の最大の問題は、やはり、原子力関係で生活している人たちの生活をどう保障するかという問題だと思っておりますので、やはりそういう眼からですね、現地に行くのは大変すばらしい貴重な体験であると、そのような期待でまいった次第であります。

【相沢】 はいどうも。ところで会場、少し、もうちょっと沢山の方が来られて、このすばらしい話聞けたら、良かったと思うんですが。それでも沢山の人がみえてるように思います。

で、神田さんの先ほどの講談なんですけど、村田先生が先ほどのお話の中でも言われていた、地球の非核化ていうテーマとですね、神田さんのお話を講談として聞きながら、何か講談の印象を含めて、村田先生の感想を聞かせていただければ…。

【村田】 やはり、自分の生存をかけてこの講談を作られたというのを拝読いたしまして、わたくしは心から敬意を表している次第であります。そして先ほどタブー破りをやられているということですね、たいへんわたくしは、頭が下がる思いであります。そして先ほどの講談を聞きながらですね、やはりこれは新しい世界、要するに国境を越えて、人種も宗教も超えて、要するに人類そのものの問題である、そこにわたくしは地球の非核化というのは、そこから非常にここで合流するんじゃないかと思った次第であります。

【相沢】 逆に神田さんのほうでこうしたかたちの講談を作って、公演を重ねているということの中で、いま村田先生のお話を聞きましてですね、先ほどちょっとおっしゃられたけれども、あらためて先生のお話の中身と自分の講談の中身と対応させながらどんなことをお考えでしょう。

【神田】 先生が先ほどおっしゃいましたが、この原子力の問題は、もう専門家に任せているからいいということでは絶対ないというふうに確信を持ちました。やはりもう、わたしたち一人ひとりが万が一の大事故の場合には、一人ひとりが、これ、電力会社で報酬を得ている人の所だけ放射能が降り注ぐわけでは決してないわけでして、ええ、必ずまんべんなくやられてしまう可能性があるわけですね。しかも急性放射線障害もあれば、ずーっと後になってからガンというかたちで出てくる。晩性放射線障害ですか、いろいろあるわけで。何一つこれは得なこと、わたしはないと思うんです。しかも今朝、真夜中ですか、地震が、震度4の地震がございました。そしてわたくしの記憶では三日ぐらい前にも地震がございました。はい、こんなに頻繁に地震がある、いつ東海大地震が来るかわからない、で、新聞で東海大地震来るって書いて、1万人の方が亡くなる予定なんて書いてありますが、原発事故のことは一行も書いてないんですね。こんな風に、嘘をつかされ、だまされていくなかで、わたしたちはほんとに市民一人ひとりが、先生がおっしゃったその通りですね、市民の時代で、この知性よりもこの感性、そして技術よりも直感、そういう意味でいえば、わたくしの仕事はですね、まあ偶然去年発表することになったのですが、そういう意味で、これから大いに元気良く語っていく必要性があるのかなという意味で、力強く思った次第です。足るを知る、こういうテーマは、ほんとは講談の世界のほうでも延々と語っていることでございます。もうほんとに忘れかけている、人としての生き方っていうんでしょうか、もう経済最優先ではなく、精神的な充足感を大事にして生きていかなければいけないという、そういう哲学のところまで踏み込んで、アドバイスしていただいたようで、わたしは、今日はほんとにうかがって良かったなと思っております。

【相沢】 ちょっと角度を変えまして、原子力のそうした危険性なり、人間社会に対する、破壊的な問題点を出すという、そういうふうな面のほかに、先生としてはですね、その非核化を実現する過程で、それではエネルギーはどういうふうに、先ほどちょっと燃料電池というようなお話もございましたが、全体的な見通しですね、大きなグランドデザインといいますか、そのエネルギー問題のですね、どうお考えですか、原子力やめたという時にですね。

【村田】 まず今の東電の17基、今16基になりましたけど、これについて関連しまして、わたくしは本の中でですね、電力会社が出した英文の資料を使いまして現状を説明しました。今の設備能力は、従来型の発電設備ですが、稼働率40%であります。この稼働率40%を70%に高めれば全然原発が必要ないと。それは、電力会社がお金を出してる電力中央協議会ですか、そこが作った英文資料ですから、最も権威の高い資料であります。そして現実にそれをやってるわけであります。従来型の遊んでた火力発電を今一生懸命起こしてるわけです、そして究極のエネルギーは先ほども申しましたように、自然エネルギーで水素を作って、そしてエネルギーを作ると。ですから、ある専門家は、日本はエネルギー輸出国にすらなれると、この技術を使えばですね、そういう見通しを持っている人もおります。そしてわたくしはその過渡期、過渡期については悪の選択、それは何かといえば、地球の温暖化、化石燃料を作って地球が温暖化するか、あるいは原子力を使って鎮圧できない破局に直面するか、わたくしは、悪の選択でしばらくの過渡期の温暖化はやむを得ないと。従いまして、過渡期は石化燃料をある程度使わざるを得ない、しかもそれは石油よりも天然ガスに力点をおいてる。そして、これと石油との関連で、一昨年の9月にわたくしはバーゼルの会議に、ここにはゴア副大統領と、元副大統領と、それからカーター大統領のエネルギー顧問デイヴィッドフリーマンさんが来ておりまして、その会議でですね、デイヴィッドフリーマンさんがちょうど同時多発テロの直後だったんです、500人位の聴衆を前に、われわれは石油文明と決別しなければならないと。そしてわたくしは、おやっと思ったんです、私と同じこと言ってるな、と。その理由がまったく違うんですね。そのテロ対策を徹底的にとるため中東諸国に一切配慮をする必要をなくすためと。そこでわたくしは思ったわけです。先ほど理想の話をしましたが、要するに世界は理想を求めないで実利を求めて動く。しかし、実利を求めていく世界はですね、いまあまりにも崖っぷちにたってる、そこで理想を実現しない限り存続できない。そういう状態になっている。理想と現実は紙一重になってる。ここにみごと天の摂理が働いてるということで、わたくしは、その意見を最近は大いに強調してるわけであります。

【相沢】 村田先生の見通しでは、この過渡期は、化石燃料、特に天然ガスに頼らざるを得ない状況下にあるけれども、その先原発に頼らなくてもやっていける見通しは十分あるんだということで、40%の稼働率を70%に引き上げることができる、できるはずだということですね。これは技術の問題でもあるわけですね。で、この技術の問題をどんな風に考えていくのか、ということですね。科学技術っていうもののとらえ方というのが、どういうとらえ方をすればいいんだろうかと。先生、先ほどの全体的な、非常に理想的な話の中では、技術から感性でしたか、直感ですね、そういうことの重要性をおっしゃられてたわけですが、そういう関係の中、とらえ方の中での技術という先ほどのことは、どういう風に説明されるのでしょうか

【村田】 先ほどの講談でも出てきましたが、科学技術と人間との関係ですが、わたくしはまず、われわれは、人間を深く理解する必要がある、人間というのは、どのように過ちを犯す存在であるか、この認識が非常に重要だと考えております。そして、もう2、30年前に、シューマッハーというドイツ出身のアメリカの経済学者が「スモール・イズ・ビューティフル」これは、ベストセラーになった本ですが、その中で強調してるんでございますね、人間には巨大技術を制御する力はないと。これからは、中間技術を重視すべきであると、移らなければいけないと。俗な言葉で言えばハイテクからローテクに移行しなければいけないと、わたくしが、まさに今、GDP経済学に代わって、代わるべき経済学として、いわゆる知足経済学、これは別名ガンジー経済学でもいいんですが、あるいは、仏教経済学でもいいんですが、要するに東洋的価値観を反映する経済学、その元となる考えでございますね。そういうことでですね、わたくしは、技術者とこないだ会う機会があって話しましたが、技術者はみんなそう思ってるんです。巨大技術は我々には制御できない、ところがその意見を上げていくと、政治レベルになると、消えてしまうと嘆いておりました。

わたくしは巨大技術、特に破局を招くような可能性のあるエネルギーってものは絶対使うべきではない。最近の一つの例をみなさまにご披露いたします。それは核融合であります。これはたいへん重要な問題であります。わたくしの本の中で核融合に反対の立場、特に六ヶ所村またもや青森県六ヶ所村が、核融合の実験装置を誘致することを決めたわけです。わたくしは、わたくしの本の中でとんでもないと言うことを述べて、二人の先生の意見を紹介しました。それは長谷川晃マックスウェル賞受賞者、それからもう一つは小柴昌俊先生、当時は1年前ですから、まだノーベル賞をとっておられませんでした。私は今年の3月、両先生と長谷川先生を通じましてお二人から嘆願書を出してもらいました。そして総理以下多くの関係者に、全部わたしが配達役を頼まれまして配達しました。その中にですね、この核融合の実験装置には、2キログラムのトリチウム、これは200万人殺傷する危険物が入ってる、それで絶対に反対である、という嘆願書を出したわけです。この嘆願書のおかげで今、その決定は少し延びております。しかしいま事務当局はあいかわらず、これも国策の態度を変えていないわけですが。

皆さん、このようにですね、最高の権威、世界最高の権威、特に長谷川先生はこれをライフワークとしてきたわけですが、彼の結論は、これはだめであるということなんです。そして他の国はやはりずるいから、そこから科学知識だけを取り出せばいい、と申しますのは、この実験装置からは発電はできない訳ですから、得られるものは、科学的知識だけなんです。それで他の国はこの知識だけを取ろうとして誘致はしない。日本が手を上げてる、これもやはり数千億円のお金がからむ話であります。わたくしはこのように世界最高権威が絶対反対としているものを、もし最終的に日本政府が決定するならば、もう、市民社会は立ち上がらなければいけないと思っております。先ほど申しましたように浜岡原発、最高の権威の国土庁事務次官が、猛反対してるとそれにもかかわらず、進めようとしている、もう理性のかけらもなくなっている。国策ですね、そして誰もいわゆる原子力村をおさえる力はないと。総理も自信もない。このような状況のもとでは、もうほんとに世論の喚起以外には手はないという事であります。

【相沢】 その巨大技術というのは人間の手には負えないんだと、制御できないんだと、いうふうなことをおっしゃられて、象徴としての核融合技術ですか、ということをお話なされたと思うんですが、どうでしょう、神田さん、この科学技術というものについて、人間があるいは人類が未来を構想していく上でこの科学技術にどれだけ、依拠したり、依拠しなかったりしたらいいんでしょうか。

【神田】 講談の世界では、まあ江戸時代のお話が多いんですけれども、江戸時代はそういった科学的なものの発展というものはほとんどなかったわけですね。それでも文化は栄えて人情もあふれて、また、いくさをするときには大量科学兵器なんてものは使わないで、一人ひとりが、先祖の名前から紹介して、これだけの自分があなたと戦うんですっていうふうな名乗りを上げて戦うような話が講談に多いんですですけれども、そういう話を寄席とかでわたくしもやっておりますので、やはりはたしてこの原発がなくって、江戸時代、大正、昭和初期って、人間は生活できなかったっていうと、決してそんなことはないし、ゆったりとした時間の流れの中で、家族と仲良くやってこれたっていうほうが、なんていうんですか、仕事の関係ですごくそういう意識が強いもんですから、このまんま暴走させていいんだろうかという思いで、もうひやひやしておるわけです。

新幹線もそうだと思うんですね。こないだ居眠りして運転した運転手のことが非常に話題になってましたが、あれは、あんなにスピードの出るものを何百人も乗せてる新幹線をたった一人の運転手に任せるということ自体、わたしはおかしいと思うんですね。もう一人乗せりゃそれでなお安心なわけなんですけれども。そうやって科学を過信して、過信していって。で、最後には、先生がさっきからおっしゃったように、取り返しのつかない事故があったときには、そのときに気がついても、これはもうどうしようもなく遅いわけで。

国が三カン欠如の状態であるとしたらば、想像力がまったくない状態であるとしたらば、もうわたしたち市民が一人ひとり、自分たちの生存をかけて声出していかないとほんと取り返しのつかないことになるっていうふうな思いをね、強くしております。もう科学の発展ていうのは人類を不幸にするようなもの、不安に陥れるようなものは、もうそろそろ待ったをかけるべきではないかなと思います。

【相沢】 お二方とも同じような話、結論になってきていると思います。で、翻ってもう一度神田さんにお伺いしたいんですけども、神田さんが描いた世界というのは、消防士夫妻の悲しい物語のなかにある孤独な人間の声というものを表現しながら、しかしそのことの中に未来の物語を重ね合わせたんだというふうにどこかでお書きになってる、説明されてるように思うんですが、そこら辺もうちょっと、講談の世界の中での神田さんの思いっていうのをちょっと説明していただけますでしょうか。

【神田】 先ほどのお話で皆さんもご存知のように、消防士の妻っていうのは特別な知識があったわけではないんですね。骨髄、中枢神経系、なんだろっていう、わたしたちと同じような感覚があって、しかもご主人はエリートでいらっしゃったわけですね。幸せな新婚生活を過ごしていて、やっと子供もできた。というところでもって、突然の災難が降りかかって。で、彼女は結局理性で何がなんだかわからない、もう整理してるまもなく、好きな人のそばにいたいって、まったく感覚だと思うんですね。感性で、だんなさんに寄り添って、そして結果的にはお腹の赤ちゃんを亡くしてしまったというわけなんですが、これが果たして嘘の出来事であっただろうかと思うんです。

まあ講釈師見てきたようなウソをつき、なんて昔から冗談半分に言っておりますけど、もう最近はわたくしは、あのはっきりいって、国とか大手の会社とかが平気で嘘つきますんで、講釈師は見てきたホントを語らなければいけないって、肝に銘じているんですが。そういう意味でいえば、チェルノブイリの事故、それから「はだしのゲン」もそうですが、あれは、嘘、夢、幻では決してないわけで、つい、この間あったことなんですね。しかもいろいろ本読んで怖いと思ったのは、あの子供たちが甲状腺ガンとかで、そういう晩発性ガンで一番ピークに達するのは、2005年だって言うんですね。来年再来年に、数万人数十万の方が、被害があきらかに一番増えるピークになる。そのあともずーっと続くわけです。

いっぺん事故があって、延々と続くこんな危険なものは他にありましょうか。どこをどう探してもこれ以上危険なものはないと思うんです。で、「はだしのゲン」で一瞬にして長崎広島原爆投下でもって、30万の方が一瞬にして亡くなりました。そのときのあの人たちの悔しさ、悲惨さ、わたくしはずっと語っておりますから、チェルノブイリの事故とまったく同じだとということを語っている中で、確信を持ちながら語ってるんですね。

先を考えたら、もう怖いから考えない。なんですか、専門家の方に、もし事故があったら、ということを、対策考えてますかって言ったら、そういうことのないように頑張りますっておっしゃるそうですね。こんな無責任な言い方はないわけで、それこそさっき先生がおっしゃったように、原発が起きた際の避難訓練、これを本気になってやるような国でない限り、もう将来はないと同じです。わたしたち一人ひとりの自覚しかない。ですからわたくしはほんとに微力です。

香織さん芸人なんだから、テレビとかに出たらっていいますけど、これは、ほぼわたしはそのつもりはありません。まっ、声もかからないでしょう。テレビのスポンサーは、電力会社がたいがい占めてるわけですね。わたしも、東京電力で沢山のギャラでやるから自分に都合のいいこと言ってって言われたら、そのときは迷うかも知れませんが断ります。ええ、「チェルノブイリの祈り」を語ってって言われたときには、ほう、たいしたもんだということで出向いて行きたいと思いますけれども。

まあ、こうなったらほんとにわが身は自分で守る。そしてわたしも娘が二人おります。この子供たちや、それからその後に続く人たちを、なんでお母さんたちもっとまじめにあとのこと考えてくれなかったのって、娘に恨み言いわれるのは私は個人的にいやだなーって思ってます。ですからもう、できる限り、微力ですけども声を上げていって、全国歩いて、危ないよ、危ないよ、今すぐ何とかしましょうよということをですね、村田先生のあとにくっついて、語り歩ければと思っております。

【相沢】 破局ってことは、想像力を持つ限り想定される、その破局が起こらない前に何とかしようということで、それぞれの立場で頑張りたいというお話でありますけれども、なんとなくこう、お話のなかで結論が見えてきているように思いますけれども、村田先生の、わたしは未来世代の代表であるということを公言なさっておるということなんですが、そのことはいままでのお話のなかで、大分はっきりしてきてはいるんですが、もう一回まとめていただけませんか。

【村田】 仕事の関係で、わたしほど世界の指導層と会ってる人は少ないと思います。しかし、先ほど申しましたように、地球の将来、人類の将来、未来の世代を考えている人はもうほとんどいない。だから、わたくしの新しい文明の定義は倫理と連帯に基づき、環境と未来の世代の利益を尊重する文明、それがわたくしの定義なんです。そういうことでですね、わたくしは未来の世代の代表を名乗ることによってですね、ある意味では、指導層に挑戦状を叩きつけているわけなんです。

わたくしは最後にですね、ひとつ望みがあるのはアリストテレスが言ったともいわれ、わたくしは現実に読んだのは、ドゴール将軍、フランスのドゴール将軍の書いた回想録、そこんなかにこういうくだりがあるんですね、一部の人間を永遠にだますことはできるかもしれない。それから全部の人間を、ごく短期間だますこともできるかもしれない、でも全部の人間を永遠にだますことはできないと。これはさっき言った、わたくしの天の摂理と同じように一つの真理だと思います。

いま、日本の国策、国民の安全を脅かしている国策は嘘に立脚しております。安全性について、これは完全に嘘であります。そこでわたくしは、国民が必ずこの偽りを見抜く日が来ると思う。そのように考えて楽観視してるわけであります。

【相沢】 どうやら結論が出たようでありますけども、今のお二方のお話というのは、非常に日本の今の状況とは、危機的な状況にあるという認識で、それはわたくしたちもそう思うこのごろではないかっていうふうに思うんですね。で、その危機的な状況をどうやって突破していくのかということのなかで、先生が情熱を持って語られてることは、国策を変える、特に現在のエネルギー政策その国策の一つの大きな柱である、エネルギー政策いうものを、変えていくってことが、必要だと。そのためには、いろんなところで発言していかなくちゃならないということでありまして、で、そのために重要なことは、ひとつのキャッチフレーズとしていうならば、「タブーを破れ」ということだと思うんですね。

すでにこうこうこうだというふうに決められているっていうか、形になっているもの、それを破る。そういうところから、それがそこここで勇気を持って行なわれることを通して、全体としての国策が変わっていくんだというお話ではなかったのかと思うわけです。

大変心強いご意見をお伺いできたわけで、先生、お二人に大変感謝を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。