「講談とはなんぞや」

 講談協会今年の三月まで、NHK朝の連続テレビ小説「やんちやくれ」で、主人公渚のお姉さん波子(高田聖子)が講談師となって活躍してました。私共(講談協会)にもいろいろな問い合わせがありました。「講談師は金持ちなのですか」「月給はいくら」「真打は何年くらいでなれるか」「講談の歴史が知りたい」「現在講談をやっている場所」「女流講談師は」などなど、そこで講談とはこうゆうものですよ、という案内を簡単にさせていただきます。先ず講談とは、講談の講は歴史という意味です。つまり過去の歴史を面白わかり易く講ずる、話をするのが講談(むかしは講釈といっていた)、話をする人が講談師。濫觴は慶長のころ、赤松法印(お坊さんだと思います)という人が徳川家康の前で『源平盛衰記』などを読んだのが講釈のはじまりといわれておりますから、五百年以上の歴史があるんです。江戸時代になると殿様や偉い人ばかりではなく、八つぁん熊さんのような庶民を相手に講釈するようになりました。往来の辻に立って話をしたので辻講釈、あるいは町講釈といわれました。長いこと話をしていると客人が疲れるからと長イスを容易し、風除けのついたて、雨が降ってもと屋根が出来、伊東燕晋(いとうえんしん)という講釈師は「私共は恐れおおくも東照神君家康公の講釈を致しますので、聴衆と同席では申し訳なし」と、縦横高き各三尺の高座の上から話をする許可を得て、寄席高座のスタイルになった。
 江戸の末期から明治にかけては講談師の人数が五、六百人、町内に講釈場が一軒という全盛をきわめる。しかし大正、昭和、平成となると栄枯盛衰のならい、現在、定席は無し、講談師関東関西合わせて七十余人という有様。しかし、女流講談師が三分の一を占め、むかしとはチョット違った型で講談が盛り上っております。修業は古くさく、時間がかかり、派手さがなく、今の世の中に逆まくような講談ですが、案外そんな生き方がかっこよいかも知れませんね。

「なんで講談?一言でいうとー」

  牧歌的な農村に生まれ、母の唯一の趣味が民謡。三味線と母の歌を聞いて育つという、およそ洋楽とは縁のない環境でした。高校卒業後、軽い気持ちで新劇の劇団の俳優養成所に入ったが、これからが地獄の苦しみ、私が生まれ育った場所が日本でも珍しい無アクセント地帯だったなんて夢にも知らなかったのだから。一言いうたびに笑われたり直されたり。大役をもらったりして台詞が多いともう真っ青。私のアクセント直しで時間が取られ、他の役の人たちに迷惑をかけてしまう。しゃべる仕事なのにしゃべるのが恐いという、なんともやりきれない青春時代でした。ふとしたきっかけで講談を習い始めるまでは・・・。講談は、ご存じのように落語や浪曲とともに日本の伝統芸の一つ。その特徴は「軍談、修羅場調子」と言って、張り扇というたたくとピシリ!という音がする、厚紙に木などで芯をいれ和紙で張ったものを右手に、左に和扇子を持ち、釈台という名の机をパパン、パン、パンとリズムを取りながら「なにがなにしてなんとやら〜」と語る調子にあると言っても過言ではない。なにしろ抑揚をつけて語る。時には2オクターブぐらい高低差がある声を出す。これが実はアクセント、言葉なまりの矯正に結果として大いに役立ったわけ。

「ちょっとだけあなたも気分は講談師」

@張り扇を作りましょう。
 張り扇の使い方。
 1,話にリズム感を持たせましょう。講談の修羅場調子には特になくてはならないものです。
 2,自分のタイミングで叩きましょう。
  「張り扇三年」といわれ、うまく叩けるようになるには時間がかかります。
 3,大切な内容の前にポンと一打ち
  注目と注耳を集めます。
 4,寝ている人を起こす時にも役に立ちます。
 5,時間と空間をワープさせることが出来ます。
  一打ちで、何年でも経過させることが出来ます。
 
では、早速作ってみましょう。
のりが乾く間を利用して講談ならではの表現例をいくつかご紹介します。

@まずは、講談独特の発声法を身につけましょう。
1,腹筋を使って、声を出します。息をはくと同時に声を出す。
 これを「つっこみ」または「語勢」と言います。
 例 「さてもその日は」のさての発声法は「て」の発声の時に強く声を出します。

 では、語勢を意識してトライしてみましょう。 

1,講談風に自己紹介
「やあ、やあ、遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ。我こそは00にその人ありと
 言われる何の某なり」
 この場合、やあ、の「あ」の方に語勢を持たせます。

@美人の形容
「沈魚(ちんぎょ)、落雁(らくがん)、閉月(へいげつ)、羞花(しゅうか)、立てばシャクヤク、座れば牡丹、
 歩く姿は百合の花、見ぬ唐土(もろこし)の楊貴妃か、ふげん菩薩の再来か、静御前か、袈裟御前、
 はたまた、神田おりね(自分の名)ちゃん。」
 意味は、あまりの美しさに魚が沈み、雁が空から落ち、月も雲に隠れ、花も恥じらっしまう。それぐらい
 美しい、という大げさな表現ですが、大切なのは、自分はそれぐらい美しいと思いこみ勇気を持って声を
 出すことです。慣れたら、句読点を気にせず、続けて一気に言ってみましょう。

@勇ましい戦いぶり
「虚と見せては実と変わり、実と見せては虚と変わる。まこと変化の早業は水に写れる月影の波のうねうね、
 うねるに似たり。二匹連れたる唐獅子が牡丹に狂う風情を表し、集散離合の手をくだき、おとらじ負けじと
 火花を散らし、六十余合と戦ったり」

@武田信玄のフルネーム(偉い人になるとご先祖から肩書き、戒名まで)
「清和天皇より六代の後胤、源の頼義の三男にして、新羅三郎義光の嫡男、形部三郎義清より
 数えて十七代の後胤、武田左京太夫信虎の長男、甲斐源氏の棟梁たる武田大膳の太夫兼信濃の守、従 五位の下、源の朝臣、春信入道法性院大僧正 徳永軒機山信玄大居士。」

そろそろ、張り扇ののりが乾きましたか?それでは 思い切り叩きましょう。言い方も繰り返している内に覚えてしまいます。大きな声で気持ちよく発声しましょう。